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ブラックコーヒー
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セカンドシーズン第1話沿い。刹那がライルを勧誘したその後。
















「おい、あんた!」

流れてくる副流煙が嫌で少し離れて歩いていると、いきなりロックオン・ストラトスに呼び止められた。


「今気が付いたが、あんた、なんて格好で歩いてんだよ。」

「何か問題があるか?」

「大ありだ!あんた、今何月か分かってんのか?11月だ。宇宙ボケしてんのか?」


キツいものの言い方。
ニールとは随分違う。








確かにあいつもあまり上品な話し方はしなかった。むしろ荒いほうだった。

だが、とても温かかった。
いつも優しくて甘い微笑みをくれた。

『刹那、お前手冷たいな』

そう言っていつも温かなポケットに冷えた手を迎え入れてくれた。


「刹那、そんな薄着じゃ風邪ひくぜ。」

そう言っていつも温かな腕の中に引っ張りこんでくれた。









このロックオン、つまりあいつと瓜二つの双子の弟ライル・ディランディには、容姿にも言動にも冷たい鋭さがある。

似ているはずなのに、ちっとも似ていなかった。

煙草の煙が鼻につく、
あいつとは違う、あいつはもうこの世にはいない、と嫌が応でも意識させられた。


この男は、あいつの代わりにはならない………。










そんなことを考えるのは、ライル・ディランディという1人の人間に対して失礼なことだとは理解していた。


あいつが消えてからもう4年もたつ。

心の整理くらいとっくに出来ているはずだった、のに………






「あんたが風邪をひこうと病気で倒れようと、俺のかまう範疇じゃないが、勧誘してきたのはあんたのほうだ。体をこわすのはCBに着いてからにしてくれ」


『刹那、そんな薄着じゃ風邪ひくぜ。
手も冷たくなってる。ほら、俺のポケットに入れろ。あったかいぜ。』







いけない。甘い声と重なってしまう。

このロックオンがあいつと似過ぎているせいだろうか、(ちっとも似ていないのに!?)
つい重ねて見えてしまう自分がいる。


瓜二つだと聞いていたから、実際に会えば重ねて見てしまうだろうと、ある程度の覚悟はしていたのに。

どうしても自己嫌悪に陥る。








『そんなに思い詰めなさんな、ほら、俺特製ホットミルクだ。あったまるぜ。』




やめろ!
もう重ねるな!

ここにいるのは別のロックオン・ストラトス。
あいつとは違う新しい存在。

あいつはもういない。
もういない、って分かっているのに…………!!












ふと、気配を感じて顔をあげると、缶を一つ投げてよこされた。

「…………ホットの…………コーヒー?」

「そ。とりあえず飲めば?」

ライルはにこりともせず無表情に自分も同じものを飲んでいる。


「…………。」

「……。何?あんた、ブラック駄目な人?
なわけねえよな、子どもじゃあるまいし。」


新しいロックオン・ストラトスが意地の悪そうな笑みを口に貼り付ける。


缶コーヒーに口をつけると、驚くほど熱くて、昔から猫舌の俺には簡単には飲めなかった。

無糖の苦さが身体中に染み渡る。






ああ、こいつはこのブラックコーヒーみたいだ。

熱すぎずちょうど良い温かさの甘いミルクとは全然違う。


辛辣で、苦くて、時々意地の悪い笑みを浮かべて。



あいつとは全然違う新しいやり方で、CBを支えていくのかもしれない。


「ロックオン・ストラトス。」

俺は鋭くて冷たい翠碧を真っ直ぐ見た。
笑みは自然と浮いてこなかった。

「ありがとう。」





















*****
新しいロックオンはビターな大人の味。

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