1/1ページ目 セカンドシーズン第1話沿い。刹那がライルを勧誘したその後。 「おい、あんた!」 流れてくる副流煙が嫌で少し離れて歩いていると、いきなりロックオン・ストラトスに呼び止められた。 「今気が付いたが、あんた、なんて格好で歩いてんだよ。」 「何か問題があるか?」 「大ありだ!あんた、今何月か分かってんのか?11月だ。宇宙ボケしてんのか?」 キツいものの言い方。 ニールとは随分違う。 確かにあいつもあまり上品な話し方はしなかった。むしろ荒いほうだった。 だが、とても温かかった。 いつも優しくて甘い微笑みをくれた。 『刹那、お前手冷たいな』 そう言っていつも温かなポケットに冷えた手を迎え入れてくれた。 「刹那、そんな薄着じゃ風邪ひくぜ。」 そう言っていつも温かな腕の中に引っ張りこんでくれた。 このロックオン、つまりあいつと瓜二つの双子の弟ライル・ディランディには、容姿にも言動にも冷たい鋭さがある。 似ているはずなのに、ちっとも似ていなかった。 煙草の煙が鼻につく、 あいつとは違う、あいつはもうこの世にはいない、と嫌が応でも意識させられた。 この男は、あいつの代わりにはならない………。 そんなことを考えるのは、ライル・ディランディという1人の人間に対して失礼なことだとは理解していた。 あいつが消えてからもう4年もたつ。 心の整理くらいとっくに出来ているはずだった、のに……… 「あんたが風邪をひこうと病気で倒れようと、俺のかまう範疇じゃないが、勧誘してきたのはあんたのほうだ。体をこわすのはCBに着いてからにしてくれ」 『刹那、そんな薄着じゃ風邪ひくぜ。 手も冷たくなってる。ほら、俺のポケットに入れろ。あったかいぜ。』 いけない。甘い声と重なってしまう。 このロックオンがあいつと似過ぎているせいだろうか、(ちっとも似ていないのに!?) つい重ねて見えてしまう自分がいる。 瓜二つだと聞いていたから、実際に会えば重ねて見てしまうだろうと、ある程度の覚悟はしていたのに。 どうしても自己嫌悪に陥る。 『そんなに思い詰めなさんな、ほら、俺特製ホットミルクだ。あったまるぜ。』 やめろ! もう重ねるな! ここにいるのは別のロックオン・ストラトス。 あいつとは違う新しい存在。 あいつはもういない。 もういない、って分かっているのに…………!! ふと、気配を感じて顔をあげると、缶を一つ投げてよこされた。 「…………ホットの…………コーヒー?」 「そ。とりあえず飲めば?」 ライルはにこりともせず無表情に自分も同じものを飲んでいる。 「…………。」 「……。何?あんた、ブラック駄目な人? なわけねえよな、子どもじゃあるまいし。」 新しいロックオン・ストラトスが意地の悪そうな笑みを口に貼り付ける。 缶コーヒーに口をつけると、驚くほど熱くて、昔から猫舌の俺には簡単には飲めなかった。 無糖の苦さが身体中に染み渡る。 ああ、こいつはこのブラックコーヒーみたいだ。 熱すぎずちょうど良い温かさの甘いミルクとは全然違う。 辛辣で、苦くて、時々意地の悪い笑みを浮かべて。 あいつとは全然違う新しいやり方で、CBを支えていくのかもしれない。 「ロックオン・ストラトス。」 俺は鋭くて冷たい翠碧を真っ直ぐ見た。 笑みは自然と浮いてこなかった。 「ありがとう。」 ***** 新しいロックオンはビターな大人の味。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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