1/1ページ目 ――アロウズ本部内のショッピングモール。 アロウズの官僚などの高所得者層を狙って、有名ブランドショップの支店が軒を揃えている。 そのウインドウガラスを虚ろに見つめる1人の少女。 亡国の姫様のように貧乏なのかと思いきや、彼女の左手にはあり得ないほどのショップバッグが抱えられていた。 彼女の名は、ルイス・ハレヴィ。 現在、ちょっとしたポケットマネーでお買い物中だ。 しかし、彼女の瞳はガラスの奥の新作バッグを映してはいなかった。 ガラス越しに常に視界に入る男の姿を凝視していた。 「………っ、さっきから何なんですか!?少尉!」 「や、やあ。偶然だな、ハレヴィ准尉!」 「ガラス越しに私をストーキングするの、やめてください。何か用ですか。」 「いや、別にその…。洋服とか、意外と買うんだな、と思って……。」 「………。」 ……確かにあたしは、おしゃれには興味がない、と言ったわ。 でも、ハレヴィ家の当主として、新作のヴィトンをチェックしないわけにはいかないもの。 それに、オトナの女性として新作のティファニーを身につけないわけにはいかないもの。 別に、おしゃれしたい訳じゃないわ。仕方なく買っているのよ。そう、仕方ないじゃない……。 「何か?(ジロッ)」 「い、いや、別に…。」 「じゃあ、もうついてこないで下さい。」 短い金髪をさらりとなびかせて、少女は去っていこうとする。 「あ…、ハ、ハレヴィ准尉!!」 「まだ何か用ですか?言っておきますけど、アロウズ内では援●交際は禁止ですよ?」 「え!?、えんこぉーーっ!?」 ―――ザワザワ 「あ……、え、え、え、エン故しちゃったのか〜。たまにあるよね、‘エ ン ジ ン 故 障’。」 「故障しているのは少尉の頭ですね。もう、半径5m以内には近づかないで下さい。」 「ま、待って!ハレヴィ准尉。」 慌てて男は彼女の細い手首を掴んだ。 「華奢な腕だ。そんなにたくさんの荷物、重いだろうから手伝おうと思って……。」 「……少尉に持てるんですか?」 ――ドサッ 「お、おもーーっ!!?」 「この義手、耐240sなんです。」 「へ、へぇ、(どうりでこの前、手首にひびが入ったんだ…。)あの…、良かったら、お茶にしないか?」 「(確かに喉も渇いたし…)少尉のおごりなら。」 「(パァア……)もちろんだ!」 その時、ショッピングモールの向こうからざわめきが聴こえてきた。 「……?」 二人が群衆の肩越しに見たものは……。 「あ、ミスターブシドー。」 「私服の上からでも陣羽織を羽織るのか。徹底しているな。さらに仮面まで…。」 「仮面を外したらミスターブシドーになれないじゃないですか、少尉。」 「あ、ああ。そうだな、ハレヴィ准尉。」 「ミスターって、どんな買い物するのかしら…。」 「ハレヴィ准尉、彼はプラモデルの箱のような物を持っているように見えるが?」 「あ、ホントだ。マスラオの発売まだなのに…?」 彼女は箱を凝視した。 「あ、あれは…“ダブルオーライザー1/100”?」 「…もう発売から随分経っているのに、今さらだと思わないか?ハレヴィ准尉。」 「(ダブルオーライザー、つまり、“ガンダム”!!……パパとママのかたき…。幸せな生活と、楽しいはずの未来と、私の左手を奪った憎き存在……!!)」 とっさに彼女は走り出していた。 「ミスターブシドーォォ!!!」 「ハ、ハレヴィ准尉!?お茶は…って、もういない!!?」 たくさんのショップバッグと共に残された哀れな男。 「…ハレヴィ准尉…、君はあんな男が好みなのか?」 彼女がミスターを追いかけて消えた方向を呆然と見つめる。 「なぜ、私をウザがるのに、あんな仮面の男を追いかけるんだ…。 ハッ!!もしかして、君は……!?」 次の日、ロシアの荒熊の息子が二番煎じで仮面コスプレを始めた、という噂がアロウズを震撼させた。 連邦軍の監査役を務めるセルゲイは、ソーマを養子にしておくべきだったと酷く後悔したそうだ。 そして彼は、決断した。 アロウズは間違っている、根底からくつがえす必要がある。 そのためには……、 ――プルルル、プルルル、プルル、ガチャッ 「もしもし、ハーキュリー?この間の件だが……。」 そして、彼らは動き始めた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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