大学パロ

俺の居場所
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絶体絶命のピンチに現れたのは、息をきらしたロックオンだった。

荒々しくドアを開けて肩で息をしていたが、屋上の光景を目の当たりにすると硬直した。


「っ………!?」



両手を後ろで縛られてコンクリートの床を這う刹那。
そして、そんな無防備な刹那を逃がすまいと襲いかかっている男。

刹那は上半身がはだけ、さらにズボンもパンツも下ろされたために大事なところが丸出しになっている。

状況を把握したロックオンは、即座に男に飛びかかった。


「てめえっ…!!」

「なっ、なんだね君は!?今ごろやって来て、私と少年の愛の……ゲフォッ!!」


鞭のようにしなった長い足が、男の脳天にクリーンヒットする。

男はぶっ飛ばされ、トイレットペーパーの芯のように床を転がり、そして、ピクリとも動かなくなった。

一撃で完全に決着はついたようだ。



しかし、ロックオンの怒りは収まらない。
蹴り飛ばされた男の襟首を掴むと、片手だけでグイッと持ち上げた。

「てめえっ、よくも刹那に…っ!」


男は口から血を垂らして、すでに意識を失っている。
よほど強い蹴りだったのだろうか。



「ロック!これ以上したら……、」


刹那はロックオンの顔を見上げて驚愕した。
普段の温厚な彼からは想像がつかない、鬼神のような形相だったから。


「ヒッ!?」


思わず後退ってしまった刹那を見て、ロックオンはハッと冷静さを取り戻した。

締め上げていた男を床にベシャッと落とすと 、急いで刹那のもとに駆け寄る。



「大丈夫か?刹那。」

後ろ手に縛っていたネクタイを慎重にほどき始める。
刹那の両手が解放される頃には、もうすっかりいつもの優しい表情に戻っていた。


「その……、すごく、心配したんだ。」

柔らかいブラウンの髪はぐしゃぐしゃになっていて、生え際には珠のような汗が浮いていた。

「急に泣き出すし、追いかけても逃げていくし……、すごく探した。」


ロックオンは自分のブレザーを脱ぐと、刹那のはだけたシャツの上から羽織らせた。

ボタンのちぎれた跡に触れかけて、グッと唇を噛み締めた。


「…やっと見つけたと思ったらこんな……っ、」


あれからずっと探しまわっていたのだろうか?
ロックオンのネクタイは乱れ、ワイシャツにはじっとりと汗が滲んでいる。


「……すまない。」

「あ、いや。俺はどうでもいいんだ。それよりも刹那は無事……じゃ、ないよな。」


露出した刹那の下半身から気まずそうに目をそらすと、羽織らせた自分のブレザーですっぽりと覆った。

その時刹那は、彼の長い指先が震えているのに気付いた。


「……ロックオン?」

「大変だったな。あいつ、通報しておくか?」

「いや、その必要はない。俺は大丈夫だ、ロックオン。」

「でも……、」


8歳も年上で、教師で、いつも頼もしいあのロックオンが震えている。
襲われたのは自分ではないのに、泣きそうな顔をしている。
怒りと悲しみがない交ぜになったような、悲痛な表情。

初めて見る彼の動揺した姿に、つくづく心配をかけたのだと刹那は申し訳なく思った。


「…立ち話をしていたんだが、急にこの変態が調子にのって襲ってきただけだ。ロックオンが来てくれたから、俺はまだ何もされていない。」

「……本当か?」

「ああ。心配かけて、本当にすまない。」


ほうっとロックオンが息を吐いた。


「よかった……。ズボン下ろされていたから、俺はてっきり…、」

「ああ。助かった、ありがとう。」

「まったく、刹那に何かあったらどうしようかと思ったぜ。」


ロックオンは刹那の隣にドッカリと腰をおろして苦笑した。

ようやく普段の表情をみせてくれて、刹那は救われる気がした。







「でも、怖い思いをしたな。大丈夫か?」

「ああ、問題ない。」

「今は強がるなよ。強姦だなんて、トラウマになったら大変だ。」


刹那の身体をひょいと抱きかかえると、自分の膝の上に座らせる。



「痛いところは?」

「ない。」

「膝から血がでてるじゃねえか。」

「ただの擦り傷だ、問題ない。」

「そうか……。他に嫌なこととかされなかったか?」

「嫌なこと?」

「えっと、その……、………キス、とか。」

「されそうになったが、なんとか防げた。」

「本当か? よかったー!」



ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

微かに香る汗の匂いに、刹那はひどく安心した。

しっとりと湿ったワイシャツの胸元に顔をこすりつけて、体重を全て彼にゆだねる。





ふいに、ボロッと目から涙が落ちた。
恐怖で泣き叫んだのとは違う涙が、自然とボロボロこぼれてきた。


「おい、大丈夫か?」

「なんでも、ない。すぐにとまる。」

「無理すんなよ、刹那は怖い目にあったんだ。幾らでも泣いて、忘れればいい。」

「……忘れる?」




確か、あの変態もそんなことを言っていた。

ロックオンを想うことで少年が苦しむのなら、自分が忘れさせてやろう、と。

その時刹那は、ロックオンを忘れてしまうということがひどく怖かった。

襲われてしまうことよりも、ずっとずっと怖かった。





「気のすむまで泣いて、怖かったこと全部忘れちまいな。」


ポンポンと頭を撫でられ、全身の力が抜けていく。
涙がとめどなく溢れる。


「…怖かった……。」

「当たり前だ。こんな目にあって怖くない奴なんていないさ。」


温かい唇が、刹那の瞳から涙を吸いとっていく。

今頃になって、ヒックヒックと嗚咽が込み上げてくる。


「ッ、こわ、かった……ッ。」

「ああ。でも、もう大丈夫だ。」

「ろっ、…く…。こわかっ………、ヒッ。」

「大丈夫、大丈夫。」


背中をさする大きな手。

トン、トンと心地よい振動が伝わってきて、まだ泣いていてもいいと促す。


「……んっ、…ろっく……。」

「声、我慢すんな。誰も聞いてないから。」

「…ぅああ"あ"ぁ…」


幼子にするように よしよしと撫でられると、もう止まらない。

たくましい胸板にしがみついて、刹那はいつまでも泣き続けた。







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